結局、焼きそばパンのプレッシャーに耐えきれなくなったがテニス部の門を叩くことになったのは3日後のことだった。決して斜め後ろの視線に耐えられなくなったという事実はない。あれから白石は、本当に冗談だったのかどうかは憶測の域を出ないが、強引に誘ってくることはおろか、話しかけてくることもなかった。あれだけ盛大に怯えていたのだから無理もない話かもしれないけれど。ただ、の精神的な問題で背後の視線に敏感になっていたことは否めない。
ちなみに件の焼きそばパンは結局美味しく頂いた。諸々の思惑を抜きにして味わえば人気も頷ける美味しさだったが、が再びそれを手にすることは当面の間はないのだろう。
「なんで門があるんだろう、どうしてテニス部に門があるのだろう」
図書室から覗いた時は、テニスコートしか見えていなかった為に門があることまでは把握できていなかった。
しかしながらなんて入りづらい門なのだ、異様な空気を醸し出す大きな門を前にしてはすっかり尻込みしていた。意地を張らずに謙也と一緒に教室を出ればよかったと後悔してももう遅い。どうしようもなく怖じ気付いている。この門を前にするずっと以前から怖じ気付いている。
やっぱり今日はやめておこうかな、と踵を返しかけた時だった。門から人が顔を出して、尻込みをしているを見て首を傾げた。
「どちらさんや」
「どうもこんにちは、こちらの住職さんですか?」
「どうもこんにちは、わしはここの生徒です」
は目の前の自分の倍はある立派な体格のその人の、つるつるの頭を見ながら世の中の不思議について思いを馳せてみる。ちっともわからない。わからないけれど、わかるのはただならぬ風格で佇むこの人物がこの門の番人らしいということだ。扉の横の、庭球部、と書かれた達筆な表札を確認する。
「……ここってテニス部ですよね?」
「そうです。テニス部に何かご用ですか?」
「ご用、ええと」
「お、よう来てくれたなあ!」
大きな背中からひょっこり顔を出したのは白石だった。向かい合う二人の様子を見て、ああ、と頷いた。
「君たち初対面やったなあ、ほなここで紹介したるわ。吃驚したやろ、彼はこう見えてもうちらテニス部の一員やねん」
「石田銀や、よろしゅう、さん」
「どうも、なんで名前」
「そら謙也のやつが言いふらしてるからなあ、テニス部員は皆君のこと知っとるんちゃうかな、…うん、複雑な顔やな。勝手に噂してすまんなあ、悪い噂やないから堪忍してや」
「せやな、にしても想像よりもずっと可愛らしいお嬢さんやなあ」
誠実さの塊のような石田にまじまじと可愛い、と言われてえへへ、とにやける。忍足侑士に言われるよりも100倍うれしい気持ちだった。
「こんなとこで立ち話もなんや、はよ中に入り。見学しに来てくれたんやろ?」
「お邪魔しまーす」

促されるままに足を踏み入れると、すっかり見慣れたテニスコートが視界一杯に広がった。コートの中では見慣れた少年がラケットを握って走り回っている。間近で見る迫力に圧倒されてが感嘆の声を上げると、振り返った謙也が目を丸くして停止した。打ち返されなかった玉が数回コートを跳ねて転がっていく。お化けでもみたような顔をした少年には愛想笑いを浮かべて手を振った。
「おま、来たんか!俺の勧誘は散々無視しよったくせに白石が言うたら速攻か。も人の子やったんやな!」
「ひがみなさんな」
それにしてもどういう風の吹き回しや?と謙也が首を傾げるので、は焼きそばパンが美味しかったから、となんとも微妙な回答をして謙也を困惑させた。
「先輩、こんなとこで何してはるんです」
ごつん、と頭を小突かれて顔を上げると相変わらず感情の乏しい冷めた目がを見下ろしていた。じりじり追いつめるような視線がコートという聖域において部外者の存在を否定したがっているようにも、単にの事を鬱陶しがっているようにも見える。どちらに転んでも苦々しい状況に変わりはない。そんな攻防を余所に白石がの頭をさすりながら、女の子に暴力はあかんと小言を言う。は消えていった細胞達の命運を祈りながら瞬きをした。
「…財前君?」
青空と彼が不釣り合いだったのでもしかして偽物ではないかと思った。頬を伝う汗と財前がアンバランスだったので確かめずにはいられなかった。彼はこんな、何かに一生懸命になって汗を流すような人だったのだろうか。謙也と同じユニフォームを纏って、手にはの頭を小突いた凶器のラケットが握られている。
「自分ら知り合いか?」
「委員会が一緒なんだよ。なんだ、部活ってテニス部だったんだ」
「言うてませんでしたっけ」
「聞いてませんねえ」
が水を差すまでコートで謙也と打ち合いをしていたのは財前だった。もしや期待の新人と言うのは財前の事だったのではないかという可能性には気付いた。変な先輩に追いかけられていた、と語っていた数日前を思い出すと辻褄が合ってしまう。前々から財前という後輩は大体の事において器用であると感じていただけにその予想は歪みなくぴたりと当てはまり、可愛気のない後輩が少し不憫に思えてくる。
「何すかその人を腹立たしい気持ちにさせる顔は」
「後で飴ちゃんあげるね」
「いらんわ。俺は先輩みたいに餌付けされるよな単純なつくりやないもんで」
どこにいても財前は通常運転だったのではおかしくて笑った。
「で、何でここにおるんです」
さんにはテニス部に見学に来てもろうてん。あわよくばマネージャーやってもらいたいねんけどなあ」
「はあ?先輩ら本気で言うてはるんですか?こんな見るからに鈍くさそな人にマネが務まるとは思えんのですけど」
「財前、君はもうちょっと言葉をオブラートで包むことを覚えなさい。さん、堪忍なあ」
申し訳なさそうに眉を下げる白石に慌てて首を横に振った。このところ白石には謝られてばかりである。そして彼の謝罪にほだされてはならないとは警戒している。
「オブラートに包んだところでドロドロに溶けくさるんがオチやと思いますけど」
「こら財前!」
白石が窘めたところで、この人甘やかしたらもっと腐ると思います、と財前は悪びれる様子もない。は自分が先週テレビで見たゾンビのようにドロドロになる姿を想像してぞっとした。ああなったらこれから来るであろう夏は悲惨なのだろう、冷や汗を掻くを見て財前が、この先輩ホンマもんのアホやな、と思っていた事に本人が気付くのはそう遠くない未来のこと。
「財前君が私のことをどう思っているかよくわかった。そもそもマネージャーをやるなんて一言も言ってないし。部員である財前君が反対してるのに無理してまでやる事もないよね!」
「うわっがヘソ曲げた!こら財前に謝りや!」
そっぽを向いてしまった財前に謙也が容赦なくドツく。まったく可愛い気のない後輩は突然の攻撃に軽くよろめきながらも堪えた様子はなかった。それどころか悪意の篭もった毒は留まる事をちっとも知らない。
「それが賢明やと思います。先輩は調理部にでも入って女子らしさを勉強した方がよっぽど有意義やと思います」
「そう言う財前君だって、先輩を敬う気持ちをもっと勉強した方がいいと思います」
「尊敬てのは誰かに強要されるモンやないやろ。俺かて敬うべき人の前では自然と頭を下げるわ、先輩は一度だって俺に尊敬されるよな事しましたか」
「泣きそう!」
「先輩が泣いたらナメクジみたいにドロドロに溶けくさるんやろな」
私って結局腐るんだ!再び絶句したを救いだしたのは白石の制止の声だった。
「君達もうそこまでにしなさい!財前、いくらなんでも言い過ぎや、そんな突っかかってどないしたん、らしないで」
「いいよ、白石くん、はっきり言われて自分のことが良く分かったよ…そしてドロドロに腐りたくないという事もね…」
「え?何言うてるのさん?人間は簡単に溶けたり腐ったりせえへんで?」
真顔でフォローを入れる白石と項垂れるを見てアホらし、と財前が零したのを咎める者はいなかった。
「も、もう帰るね!部活の邪魔してごめんなさい」
さん?!」
完膚無きまでに財前にやりこめられ、力無く項垂れたは部員達に背を向けとぼとぼと元来た道を戻り始めた。来た時以上にの足取りは重く、まだ春だというのにじりじりと太陽が隙間無く照り付けてくるので今すぐにも溶けてしまいそうだった。テニスをするためのコートに一人だけそぐわぬ制服姿でいる事すら滑稽に思え、あと数分でもここに居ようものなら太陽と彼らの熱にあっという間に溶かされてしまうのだとは確信する。
「…先輩」
哀愁漂う後ろ姿に声をかけたのは財前だった。よりにもよって彼とは!は恐る恐る振り返ると
「帰り道、逆です」
財前の指は進行方向と真逆を指していた。
他の部員達の視線が突き刺さるようで痛い。
うわあ、と全身に一瞬の内に熱い血が駆けめぐって、あ、ありがとうと吃りながら顔を真っ赤にして走りだすと今度は白石の慌てた声。
さん!」
危ない、その声に反応するより早く、は自分の体が前のめりになるのを感じていた。

「あ」

左足に違和感。ころころと転がる為だけに存在しているようなフォルム。丸くて硬い。が踏んづけてもびくともしなかった。
最初に声を上げたのは誰だっただろう。突然のことに受け身を取ることすら思いつかず、は見事に顔から地面に衝突した。脳髄がこれ以上ないくらいに揺さぶられる感覚。地球の重力を忘れて一瞬で一周ぐるりと回ると硬いものに叩きつけられてあちらこちらで火花が散る。にとっては何度も経験した痛みで、何度も経験したくない痛み。
激痛と、静まりかえったコート内には顔を上げることができない。
「……」
静寂の中、ころころと転がっていくテニスボールが少女を嘲笑っているようにも見える。それは数分前に謙也が返し損ねたボールだった。誰よりも早く我に返った白石が走り寄ってくる。「さん、大丈夫か?!」ちっとも大丈夫ではなかった。顔はとても痛いし、鼻が折れてしまったかもしれない。良いとこ無しな上に羞恥心で死ねる、緩慢な動作で身を起こすとはそのまま蹲った。ふいに頭上が陰ったのはに合わせてかがみ込んだ白石の体が陽の光を遮ったからだ。まだ溶けるまでには猶予があるらしい。
「…皆さんもうおわかり頂けたと思うけど!この通り私と球技は鬼門なんです」
痛くて、なによりも恥ずかしい。顔を覆ったままは呻った。顔面が高熱を発しているのは、強打した部分がとてもとても痛いから。
「そんなことないで!大体は球があろうがなかろうがどこでも転ぶやろ」
「謙也さん、それフォローになってないっすわ、寧ろトドメ刺してるようなもんや」
背後からそんな掛け合いが聞こえてきて、はますます蹲った。
「で、でもお笑い的にはオイシイで、あんな綺麗に顔からコケれる奴は滅多におらへん!胸張りや!あ、もう顔張っとったわ」
「忍足一族って皆そうなの、はらたつ!」
「何て?!」
声を荒げると顔面中が悲鳴を上げた。謙也の余計な一言のせいでどんな顔をして立ち上がればいいのかわからない。
さん手、どけて」
「や、やだ!鼻曲がってるかも…!」
「せやったら余計に見せてみ、…ん、鼻の頭が擦り剥けてるわ」
強引に取り払われた手を見送ると、真剣な顔の白石の顔が飛び込んできてのけぞった。非情に心臓に悪い。
「鼻は折れてへんし傷も残らんと思うけど、ちゃんと消毒せなあかんな。ちょおさんの手当してくるから、皆は部活再会しとき」
さん、立てる?自然に伸ばされた手にぼんやりしていると、なんや、おんぶして欲しいんか、と笑いながら言われては慌てて立ち上がった。
「ああ、膝小僧も擦り剥いてるな。部室に救急セットあるからそこまで辛抱してな?」
またおんぶを持ち出されては敵わないと、は何度も首を縦に振った。
さん、頭打ったのにそない動かしたらあかん」


これでよし、仕上げに鼻に絆創膏を貼ってもらうとわんぱく小僧のような様だった。鏡を見て帰宅してからの兄の反応を想像しただけで憂鬱だった。一部始終を謙也に見られていたのも痛い。早急に口止めをしておかなければいけないとの口からはため息が零れる。途端に白石の顔色が下降を始めたので、このため息は違うのだとは慌てて頭を振り、こら安静にしてなあかん!病院連れてくで、と優しく脅される。
「財前君の言う通りで私って鈍くさいんです」
鼻どころか顔中を覆ってしまいたい。居たたまれなくてそう零すと、白石は苦笑した。
「俺はさんが鈍くさくても笑ったりはせえへんで、危なっかしいとは思うけど。財前はあんな事言うたけど、もしそれがさんの中で障害になって、俺らに迷惑かけるんとちゃうかとか思ってるんやったら間違いやで」
が首を傾げると、真摯な目をした白石が救急セットを片付ける手を止めて言った。
「人には持って生まれた性質っちゅうもんがある。それをどうにかしよう思てもなかなか難儀なもんや。質って言うのはそう簡単に曲げられへんもんやろ。それでもどうにかしたいって一生懸命になるモンの事を笑うことなんて俺には出来へん。さんがどうにかして変わりたいて思うんやったら俺は全力で応援するで。テニス部はな、皆一生懸命やねん。まだまだ発展途上で未熟なとこだらけの新しいチームやねん。せやからスタートラインなんて皆同じようなもんや。一緒に頑張ったろ!て言うやる気のあるマネージャーは大歓迎です。鈍くさいなんて言い訳にして欲しくない。それに俺はな、君みたいな子見てると放っておけへんタチなんや、出来の悪い子見てたらなんとかしてやりたいねん」
タチの悪い人だな!とは思った。お人好しにも程がある。それにしたってやる気がある子なら他にもいるだろうし、別にである必要はない。どうして自分なのだ、やはり鈍くさいところが白石の琴線に触れてしまったのだろうか、は真意を知るほど白石という人の事を知らないし、それは相手も同じ。
「本音を言うと俺もな、新米の部長で手探り状態やねん。部の為にどうしたらええか、どうやってあの濃い面子をまとめたらええか、正直頭が痛いことだらけやねん。謙也からようさん君の話を聞いて、この数週間後ろから見させてもろて、さんなら一緒に頑張ってくれるんやないかな、なんて勝手に期待しとるんやけども、これは俺の本意であってさんに強制するつもりはないけどな」
ほんでもどうやろう、前向きに考えてくれへんか。真摯な態度でそう言われるとは何も言い返せなかった。は今までこんな風に誰かに期待を向けられたことがないので、じんわりと迫る白石の言葉の柔らかさに戸惑うばかりだった。
白石は止めていた手を再開させると、視線を救急セットに注いだまま、事も無げに言った。
「せや、焼きそばパン、美味しかった?」
「う、うん」
そうかそうかそら良かった、と朗らかに笑う白石。
さんずっと焼きそばパンに熱上げてたやろ、クラスの女子と楽しそに熱く語っとる君を見てたからお気に召してくれて安心したわ」
ここにきての焼きそばパンである。爽やかに笑う白石にはとても他意があるようには見えないのに、の胃の中は数日前に食べた焼きそばパンの感触がぐるぐるとまわっている。



◇ ◇ ◇



「どうやったテニス部は」
ようやく校門を越えた所で声をかけられた。
つい今し方テニス部に居た事を知っているなんてどういうことだ、はその事を誰にも話していかなった。怪訝に思って立ち止まると無精髭に薔薇柄のチューリップハットという見るからに不審な人物が校門にもたれかかるようにして立っていた。視線は明らかにに向けられている。関わってはいけない人物のような気がしては素通りを試みた。
「無視せんといて、傷つくわさん」
名前まで割れていて、またもや謙也の仕業なのだろうかとげんなりする。仕方なしに歩みを止めると俺は別に怪しいモンやないで、と煙草を吹かしながら言われ、は顔を顰めた。
「どうも初めまして、テニス部顧問のオサムちゃんです」
気軽にオサムちゃんて呼んでな。頭痛がするのは頭を打ち付けたせいだ。白石には散々断ったが、病院にいって精密検査を受けたほうがいいのかもしれない。
「君がウワサのさんやろ、今日は見学に来てくれてありがとな」
は噂の情報源は謙也であると確信した。
「ほとんど見学できませんでしたけど」
「知ってるから皆まで言わんでええよ。君、想像以上にオモロイ子やな。俺としても是非テニス部にウエルカムしたいねん」
だからどうして自分なのか、はどこから突っこむべきか最早わからなくなっていた。一部始終を見ていたのなら顧問として断固反対すべきなのに、成る程この顧問にしてあの部員ありと言うわけである。
「ウチの部長さんとはよう話出来た?君たち確か同じクラスやったよな」
「はあ」
「君から見て白石はどう思う?」
「どうって…どう思う程知り合いでもないですけど」
「第一印象はどうや」
「…同い年とは思えない程ずば抜けた人。2年なのに部長なんて凄いことですよね。人望もそれに見合うだけの実力もあるし。だけど私は少し怖い…ねえ、先生、こんなこと聞いたって私は白石くんの事これから先だってちっとも理解できるとは思えないので無意味です。私と彼はまるで正反対だもの」
「正反対ねえ、なかなか面白い事言うわ。
確かにアイツを部長に使命したんは俺やし、誰よりも白石の才能買っとる。実際大人の俺から見てもホンマに出来た奴やで。でもな、なんぼ凄い奴言うてもまだまだ中学生や、何でも出来る奴に見えて、どうにも出来へん事だってある。指名した俺がこんな事言うのもおかしいけどな、そこをさんに補ってもらえたらなあって期待してんねん」
「そんなこと言われたって、私何もできないですもん」
「そこや、何も出来ないのが逆にええ。君が今言うたように、白石にないモンを君は持っとるし、君にないモンを白石は持っとる。お互い気づける事があってええんとちゃうかな。人生持ちつ持たれつ、さんはテニス部をええ方向に導いてくれるような気がするんや。俺の勘って結構当たるんやで!特に最近は二日連続でパチンコ大当たりしてなあ、調子ええんや。まあそんなわけで何事も挑戦や、何かあったら俺も力になるさかい、あの荒くれ者どもの尻叩いたってくれんかな」
それってなんてギャンブル運!今日一日さりげなく貶されてばっか、は叫びたい気持ちをぐっと我慢した。
「でも先生、私って本当に今まで彼らのように何かに一生懸命に打ち込んだり熱くなったりしたことないんです」
「かまへんかまへん、せやったらさんもこっからがスタートラインやんな。あいつらと一緒に熱い青春始めようや」
白石と同じことを言う。青春とは何だろう。例えばあの財前君が汗を掻きながらラケットを握っていたこと、あれも青春の一コマだとしたら。は無意識に、鼻に貼られた絆創膏に手をあてた。
「心配せんでも面倒見のええ白石が引っ張ってくれるからなーんも構えることないでえ」
でも先生、それって白石君の負担がただただ増えるだけのように聞こえるんですけど。
「まあ君もそのうちわかるから。騙された思ってやってみなさい。お試しでもええ。俺は予言するで、君は立派なマネージャーになる!」
そういっての頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「先生、さっき頭打ち付けたばかりなんで乱暴にしないでください」
「おお、せやった!すまんな、お詫びに1こけしやろ、ついでにマネージャーの話受けてくれるんならもう1こけしやるで、しかもお気に入りのやつ」
「そういうのいらない」


2013/05/19