「幸村、幸村」
「なに」
「今タコが…違った、ジャッカルが見えた気がしたんだけど」
「なんだって?」
「気のせいじゃないよ、だって無駄に光る頭部の直ぐ下辺りに赤いのがチラチラしてた」
「…」
、もしかしてテニス部の奴らに今日のことを話した?」
「言ってない、けど」
「けどなんだ、はっきり言ってみろ」
「水族館がいいって助言をくれたのも、このチケットをくれたのも柳…」
「…成る程ね、状況はよく分かった。どうしてそれを最初に言わないんだ。お前が見たのはジャッカルと丸井で間違いないな、恐らく他の連中もどこかにいるはずだ」
「は、何で?」
「何でってお前ね、この状況をあいつらが面白がらないわけがないだろう、そももそ柳がチケットを渡して来た時点でどうしてその裏を読まないんだ、短い付き合いでもあるまいしそれ位分かれよ、それくらい3歳児だってわかることだぞ。あいつらと3年も付き合って一体何を学んできたんだ?そうやって考えなしだからお前の脳は退化するんだ、ああ頭が痛い、お前の将来が不安でたまらないな、どうせ都合の良い口車に乗せられて悪質な詐欺に騙されてろくな人生にならないんだろうな!ちゃんと生きていけるの?」
「うわ、態とらしい心配をどうもありがとう、3歳児がそんなことわかるわけがないでしょ…、ちょっ、頬抓らないでよ痛い!」
「なんだその目は俺がこんなに心配してやっているのに」
「優しさの押し売りっていうんだよ、というか悪質な嫌がらせにしか聞こえなかった」
は本当に考えが甘いんだよ。柳が優しく相談に乗ってくれたから、だって?
馬鹿なのか、あいつらが無償でお前に優しくするわけがないだろう」
「友情ってプライスレスじゃないの、今までの3年間が不安になってきた」
「甘いな」
「でもなんでわざわざ全員でこそこそ付いてくるわけ、水族館に来たかったなら素直に言えばよかったのに」
「今の状況を見てもわからないのか、どうしようもない奴だな、俺は一体どこからお前を教育し直さなければならないんだ、もう卒業なのに肩の荷がちっとも降りないじゃないか…」
「蔑んだ目でみないでよ」
「俺は観察するのは好きだけど観察されるのは不愉快なんだ」
「そうだろうね、幸村はそうだろうね」
「お、でもそれくらいはわかるんだ」
「ちょっと今のはイラっときた」
「そうだろう、今日の行動を全て柳に把握されていると考えるだけで腹が立つだろ」
「いや、貴方に対してなんですけど」
「せっかくの日にこんな形でケチがつくなんて本当に許し難いな」
「…もういいや」
「何が不満なんだ、言いたいことがあるならはっきり言えよ、「長いものには巻かれろ」なんていう軟弱な人間に育てた覚えはないぞ」
「今のは幸村が悪いでしょ!八つ当たりしないでよ」
「とにかくだ、あいつらに出てこさせて謝罪させよう。まずは真田からだな、あいつは単細胞だから簡単だ」
「うわあ、真田のことそんな風に見てたの?!」
「今頃飛び出したくて堪らない真田を必死に赤也あたりがなだめているだろう、丸井に無理矢理連れて来られたジャッカルは面倒臭いとか言いつつちゃっかり水族館を満喫してしまったばっかりにに発見されるといううっかりミス、柳生だって面白がる仁王を窘めつつもこの間イルカショーに興味があると言っていたな」
「ねえ幸村、落ち着いて、目が怖い」
は腹が立たないの?」
「確かに酷いとは思うけど、全部幸村が代行してくれたからもういいや」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。そんなこと言われると俺も怒った甲斐があったかな。だけどそうやっていい話みたいにうやむやにまとめようとしても無駄。あいつらは俺がどれだけ不愉快を被っているか思い知るべきだ」
「全員完璧に嫌ってほど思い知っていると思う」
「ねえ、俺達が今ここで接吻の一つでもかましたらどうなると思う?」
「はあ?!」
「真田の反応を想像するだけで面白いと思わないか」
「思わないよ!絶対やだよこんなところでしかも皆の見てる前でなんて!ああもう幸村のそういう無神経が信じられない」
「いつもの『たるんどる!破廉恥だ!』って叫びながら飛び出してくると思う?」
「あのねここ水族館だよ、そんな迷惑なこと絶対だめに決まってるでしょうが、そもそもそう言う問題じゃないって言ってるんだけど!誰かこの人にデリカシーをわけてあげて」
「なんだよさっきまでミジンコになりたい、なんて言っていたくせに随分小さいこと言うんだな」
「そんなこと一言も言ってないよね、都合のいいように事実をねじ曲げないでよ」
「まあそう言うな」
「…なんだかんだ結局この状況楽しんでるでしょ」
「わかる?俺だけ楽しいことに参加できないなんて許せないだろう、状況を逆手に取らないと」
「いいけど私を巻き込まないで、ちょっ、うわ、顔近いっ」


「貴様らああ!!たるんどる!!!」


「「あ」」






2012.3.21

幸村くんお誕生日おめでとうございました。随分過ぎてしまったけどその分気持ちこもってるから・・。
二人が本当に接吻笑したかはご想像にお任せ。
ただ単に真田の為にあえて「接吻」っていう幸村が書きたかっただけ