星は必ず巡るだろう
決して留まることの出来ないこの地で
決して留まることの許されなかったこの世界で
巡り巡る
歩み続けねばならない
それが贖罪であるなら
それが運命ならば
これは私の我が儘かもしれないけど
許して下さい
唯一の願いだから
私は今、あのときから遠い所にいます。
ねえ、君は今、幸せですか?
prologo.
messaggio −メッセージ−
「よし。」
かけ声をかけて勢いよく立ち上がる少女。その瞳には揺るぎない決意の様なものが浮かんでいる。
視線の先に、未だ見ぬ幸福が降り注ぎますよう、呟いた声は誰に拾われるでもなく風に溶けた。
勢いがよすぎたせいで座っていた椅子が、古く少しくたびれた床がキシリと小さな悲鳴をあげ、
少女が歩くのに合わせてその音も続き、静かな室内に風変わりなリズムが響いた。
勢いよく少女が扉を開けると、思いがけず部屋に太陽の光が差し込んだ。埃っぽかった部屋に
光と共に入り込んだ風によって小さな旋風が巻き起こった。
少女は思わず目を瞬かせる。
薄暗かった室内にいたため、目が外界の明るさに慣れないのだ。
あまりの明るさに、あまりの陽気さに、今さっき決意したものが挫けそうになる。
だけど。
「よし」
絶対に挫けてはならない。直ぐに諦めてしまうのが悪いくせなのだ、と散々あなたに怒られたっけ。
思いっきり両手で頬を叩いたら一寸痛かった。
「よし!」
外へ一歩足を踏み出した所で、立ち止まり、くるり、と踵を返した。
「行ってきます。」
埃だらけ生活感のまるでない部屋。人の気配などない部屋に向かって。
もう此処に来ることはないだろう。
でも此処は思い出の場所なのだ。君との思い出の場所。
だけど今は此処にいるはずの人がいないから。
もういないから。
「待ってて。
絶対に 」
今度はもう振り返らない。
後悔はない。
扉を開けて広がる世界はとても美しくて、
歩き出した世界は何処か暖かくて、
何よりも空が青かった。